かおりんの卒業公演には絶対来ると思ってた。
だって苦楽を共にした仲間だから。
予想通りに開演前の楽屋にやってきたあの人は、
あたしがテレビで見ていたころと変わってなくて、少し安心した
あ、真希ちゃんが会いたいって言ってたんだっけ。呼んできてあげよう。
あたしは「失礼します」って言ってあの人の…石黒さんの横を通り抜けようとした。

「吉澤さん?」
「はい」

あたしの名前、知ってんだね。

「最近、綺麗になったわね」
「ありがとうございます」

なんかのインタビューで、かおりんが抜けたら娘。は梨華ちゃんしかわからないなんて言ってたから、
てっきりあたしのことなんて知らないって思ってた。

真希ちゃんを呼んで来て、しばらくしてトイレに立つあたし。
そしたら少し遅れて石黒さんが来た。

「こうやって言葉交わすの、初めてだね」
「そうっすね」

本当は、すごい憧れてた。
なのにここんとこの石黒さんの娘。への辛口発言聞いてたら、わけもなく無愛想になってしまった。

「紅白も見させてもらったけど、神がかり的に綺麗で驚いたわ」
「はぁ…」
「あんまりしゃべんないんだね」
「…ずっと憧れてました」
「へ?わたし?」
「モーニングに入る前から、かっこいいなって思ってて
石黒さんみたいな大人になりたいなって思ってて、
娘。入ってから、実際はプッチ入ったわけですけど、
よっすぃ〜はタンポポ向きだねって言われたときは、嬉しかったです
あたし、石黒さんはずっと娘。を愛してくれてるって思ってました」
「愛してるわよ?」
「じゃあなんで娘。を卑下するようなこと言うんですか?」
「それは、そういうキャラクターを私が求められてるから…」
「聞いてあたし、めっちゃ悲しかったんですよ?
石黒さんはそういうこと言う人だと思ってなかった」
「私のイメージって何?そんなの娘。時代に作り上げられた虚像じゃん」
「本心で言ってるんですか?本気で娘。きらいですか?」
「……」
「言わなくてすむなら言いたくないんでしょ?」
「でも…」
「真希ちゃん…ごっちんにも石黒さんはすごく優しい人って聞きました。なのになんで…」
「わたしをかいかぶりすぎだよ」
「そんなことをない!」

あたしは思わず石黒さんを抱きしめた。

「ちょ…吉澤さん?」
「よっすぃ〜です」
「え?」
「よっすぃ〜って呼んで下さい」
「よっすぃ〜…何なの?」
「好きだった頃の石黒さんに戻ってください」
「戻ってって…私は私だから」

言葉では7歳も上の石黒さんに勝てるわけがなかった。
あたしは自分の腕の中の石黒さんの唇を奪った。

「何すんのよ!」

頬を叩かれた。

「あ…ごめん…」

石黒さんがあたしの頬に触れる。

「ライブ前なのに…ごめんなさい…」
「赤くなってます?」
「うん…」
「痛いっすもん」
「ごめんね」
「でも心の方がもっと痛いから…。
石黒さんが娘。のことについて辛口発言するたびに、心が悲鳴あげてます」
「よっすぃ〜…なんでそこまで私のこと…」
「憧れてましたから。その気持ちはそんな簡単に変わるわけないですよ」

こんどはゆっくりと、石黒さんを抱き寄せた。

「彩さん」
「…はい」
「キス…しますよ?」
「うん…」

あたしは石黒さんにゆっくりと口づける。
途中、石黒さんの手があたしのシャツをぎゅっと掴むのがわかって、嬉しかった。

「自分より背の高い女の子とキスするの初めてだ」
「あ〜中澤さんですもんね」
「…知ってたの?」
「有名でしたから」
「あら…」
「中澤さんに怒られますかね」
「大丈夫っしょ」
「うぉ〜、生あやっぺの北海道弁だぁ〜」

悶絶するあたしに

「変な子。でもかわいい」

頭を撫でてくれる。

「好きになっちゃうかも」
「いいっすよ」

今一度抱きしめて。

「痛かったよね?ごめんね」

石黒さんが頬にくれたキスをお守りにステージに向かう。

「明日、待ってるね」
「はい。手料理楽しみにしてますから」

明日の再会を楽しみに、泣かずにかおりん送り出せるように頑張るよ頑張るよ。
そう言ったら、あたしが大好きな人懐っこい笑顔で
「おぅ、がんばれ」って送り出してくれた彩さんが大好きだ。

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