「ま、真希ちゃん?」
「吉澤さん…いや、ひとみちゃん」
「…何?」
「なんで着信拒否したの?」
「そ、それは…」
「すごい悲しかった」
「だって…報われない恋ならしない方がましだから…」
「私、ひとみちゃんのこと好きだよ」
「え?」
「私が紗耶香のこと最初で最後なんて言ったから傷ついちゃったんだよね?
ごめんなさい。過去なんて霞んじゃうくらいあなたが好き」
「水商売だよ?」
「何にも知らない友達にね、分不相応だからやめとけって言われた」
「分不相応?」
「お店のナンバーワンなんて高望みだって」
「そんなことないよ。真希ちゃんが望むなら、あたし店辞める」
「ホントに?」
「辞めてほしい?」
「心配だもん。無茶苦茶な飲み方するし」
「わかったよ」
「え?」
「ずっと、そばにいてくれますか?」


真希ちゃんは返事のかわりにあたしの胸に飛び込んで来た。
嬉しくって涙が流れた。

「ひとみちゃん、泣いてる」
「うるへ〜」



翌日、あたしは店に辞表をだした。

「恋人か」
「はい」

全てを語らずとも中澤さんはわかってくれた。



今あたしたちはあたしの故郷で小さなペンションを営んでいる。
真希ちゃんのつくる美味しい料理が評判で、そこそこ流行っている。
あたしの昔のお客さんも今は普通の宿泊客として利用してくれている。


一人の愛する人との出逢いは人生をも変える。真希に出逢えてよかった

FIN

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