「あたし…」
「胃痙攣おこしたんですよ。点滴したんで、もう大丈夫ですよ」
「…迷惑かけた?」
「仕事ですから」
あぅ…。
「帰ります…」
仕事バレないうちに帰ろう…。
「だめですよ」
「え?」
「週明けまで泊まってもらいますから」
「…まじ?」
「吉澤さん、お酒飲む仕事されてますよね」
…バレてんの?
「どんな仕事か聞いたの?」
「いえ…お酒飲む仕事としか」
よかった…。
「確かに毎日飲むけど…」
「検査の日まで飲まないでいただきたいんで、
入院してもらうようにってドクターからの伝言です」
仕方ないか…真希ちゃんの白衣見れるし、よしとしよう。
翌朝、夜勤が明けて帰る前に、真希ちゃんがあたしのところに寄ってくれた。
「なんか困ったこととかありますか?」
「ある」
「へ?」
「着替えたい。でもあたし、一人暮しだし」
何わがまま言ってんだろ、あたし。
「あの…それって…」
「荷物取って来て?」
必殺上目遣い攻撃だ。
「わかりました…」
鍵と何がどこにあるか書いた紙を渡して、
真希ちゃんが帰って来るのをドキドキしながら待った。
昼前に彼女は戻ってきた。
鞄にきっちりと頼んだモノが入っている。
「ありがと。ごめんね?夜勤明けなのに」
「いいですよ、これくらい」
それじゃあ帰りますって言う真希ちゃんに、笑顔で手を振るあたし。
本当はもっともっと話してたいのに。
なんでだろ、言えないや…。
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