「はい、これお薬」
「サンキュー」
「大丈夫なの?」
「まあ大丈夫でしょ」



あたしは同僚の梨華ちゃんから薬を受け取った。


「あんまり飲まない方がいいわよ?…って言っても飲むのよね?」
「そういうこと。飲むのも仕事っすから」

水で梨華ちゃんからもらった薬をごくりと飲み干し、控え室をあとにした。

「みんなおはよう」
「おはようございます」

店長の中澤さんが話をはじめる。

「今日から売上強化週間が始まるわけやけど、
今回はEXCに負けんように、気合い入れていこや」

あたしの働く街は新宿2丁目。
ボーダーレスな性が渦巻く街だ。
あたしの勤める店は、所謂レディースバーってやつで女が女の接客をするのだ。
売上強化週間ってのは文字通り売上をいつもより伸ばそうってキャンペーン期間で、
うちの店はいつもEXCという店とトップを争っているのだ。
店が始まると、みんな必死で客の相手をして売上を稼ぐという感じになるんだ。

「ひとむさん、ご指名です」
「はいよ」

あたしはこの店でナンバーワンの売上を誇る、
源氏名を『ひとむ』と言った。
売り上げは自分を指名してくれた客が店でどれだけお金を落としてくれるかにかかっている。
店内でのあたしたちの飲み食いもお客さんが出してくれるので、
いかに単価の高いものをたくさん頼んでもらえるかに自分の成績がかかっているのだ。
今日、あたしを指名してくれたのは大企業の女社長。
あたしがこの店に入ったころからのお得意さまで、
あたしの乗ってる車もバイクもこの人から貢がれたものだ。
もちろん、店で使ってくれる額も半端じゃなくって、今日も…。


「ピンドン入ります」


一本30万のドンペリを入れてくれた。

「いつもありがとうございます」
「いいのよ。私の趣味なんだから」
「趣味ですか」
「そうよ。わたしはひとむがシャンパンを飲む姿が好きなの」

いつもそう言って、あたしがシャンパンを飲む姿をただ眺めているんだ。
喜んで欲しいからいっぱい飲む。
そしたらまたボトルを入れてくれる。
だから、浴びるように飲むんだ。
だってライバルにトップを取られたくないし。
うちの店にはあたしと一位二位を争っているホストがいた。
源氏名を『紗弥斗』といった。
紗弥斗も今日は上得意様が来ていて、ばんばんオーダーの声が飛んでいる。
負けらんねえ。
がぼがぼ飲み干すんだ。
…結果。

「…ケホッゲホゲホゲホ…ォエ…ゲホッ…」

とてもじゃないけど閉店まで持たないから、
途中でトイレに立ち自分で指を突っ込む。
それですっきりさせてまたテーブルに戻る。
毎日吐くから、吐しゃ物に血が混じるようになって、
梨華ちゃんの彼女がナースだから聞いてもらって、
逆流性食道炎だろうねって言われた。
だから胃薬を都合してもらってるってわけ。

結局この日は閉店まで女社長は店にいて、そのあとアフター。
結局この日あたしが解放されたのは、もうとっくに始発電車が動いている時間だった。

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